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映画:「ヴィヨンの妻~桜桃とたんぽぽ」~録画で

2012-04-14-Sat
NHKのBSプレミアムの録画で、太宰治原作の映画「ヴィヨンの妻 桜桃とたんぽぽ」を見た。松たか子主演で、相手役は浅野忠信。

映画「ヴィヨンの妻 桜桃とたんぽぽ」は、太宰治の短編小説「ヴィヨンの妻」(→青空文庫「ヴィヨンの妻」)を柱に他の太宰の短編のエピソードを巧みに挿入して、構成してある作品だ。goo映画の解説に、その作品が紹介されている。

2009年に生誕100年を迎えた作家・大宰治の「ヴィヨンの妻」「思ひ出」「灯篭」「姥捨」「きりぎりす」「桜桃」「二十世紀旗手」をもとに、ベテランの田中陽造が松をイメージして書き下ろした脚本は、セリフに息づく時代の匂いと文学的な美しさが光る。大宰を髣髴とさせる狡いが憎めない大谷役の浅野忠信も好演。第33回モントリオール世界映画祭で監督賞に輝いた秀作。
 → goo映画:「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~」 


幸いなことに、太宰治の著作権は切れているので、ここにリストアップされているものは全て、青空文庫で読むことができる。映画を見終わってから斜め読みでも読むと脚本の巧さに感心させられる。これだけの話を寄せ集めながら、みごとに一本にまとまっているのだから。
※青空文庫:「思ひ出」「灯篭」「姥捨」「きりぎりす」「桜桃」「二十世紀旗手

で、そもそも、ヴィヨンとは何者か? 「ヴィヨンの妻」というのだから、人物なんだろうけれど……。それはWikipediaにズバリ載っている。本名はフランソワ・ヴィヨンといって、15世紀フランスの詩人。「中世最大の詩人とも、最初の近代詩人ともいわれる」そうだ。

パリ大学に入学して同学を卒業したものの、在学時より売春婦やならず者といった輩と行動を共にするようになった。1455年に乱闘騒ぎで司祭を殺してしまい、パリから逃亡してアンジュー近郊の窃盗団に加わる。その後再び罪を得て1461年にオルレアンのマン・シュール・ロワール(Meung-sur-Loire)の牢獄に投獄されたが、恩赦により出獄。1462年、淫売宿で強盗・傷害事件を起こして投獄され、一時は絞首刑宣告を受けたが、10年間の追放刑に減刑されて1463年にパリを追放された。その後のヴィヨンの消息に関する記録は一切無い。


原作小説も映画も、この実在したフランソワ・ヴィヨンの話ではない。松たか子が演じるのは「ヴィヨンの妻」の役どころとなるとすれば、相手役浅野忠信が演じるの大谷譲治という作家が、ま、ヴィヨンということになるのだろう。他人(ひと)には書けないものを書く作家として一定の人気はあるが、同時に、ギャラ(原稿料)は家庭に入れずに遊び歩き、飲み歩き、不健全、不健康、ときに犯罪紛いまでするという、一種の生活破綻者でもある。フランソワ・ヴィヨン的なダメ人間、「現代のヴィヨン」というわけである。

妻は、誠実で、奥ゆかしく、夫を立てる、ま、かつての日本の妻の鏡、内助の功、というタイプである。だらしない夫をあくまで信じ、耐え、ついていく。芯の強よさと、奥ゆかしさ、そして、内に秘めた美徳を持っているわけだ。ま、映画の一つのテーマはそのような日本人女性の美しさであり、日本で仕事のできる男の一種のだらしなさであるとも言える。副題の「桜桃とたんぽぽ」とは、太宰治自身と「ヴィヨンの妻」である佐知のことを言っているわけだが、それは、おそらくは、かつての日本の一種の典型的な夫婦関係の一つだっただろうと思われる。

もちろん、そこまでダメ人間というほどではないが、仕事一辺倒で家族のことなど顧みない男というのは、つい最近まで、いや現代でもゴロゴロいるし、そういう夫に一抹の不満を抱きながらも、貞淑な妻、内助の功という言葉で示されるように、がんばる妻の、ついこないだまでいくらでもいたように思われる。さらに言えば、家計に困って奥様が働きに出るということは、当たり前になっているわけで、それをきっかけにして、女性自身が自分の価値や魅力を再認識し、逆に、内助の功の要素も貞淑な妻の要素も次第に次第に減じていったというのは、この小説や映画の話であろとともに、まさに、近代から現代にかけて、日本の多くの家庭で自然に起きてきたことなのである。

一点違うのは、太宰の時代は、ジェンダーというか、夫が外で働き、妻が家事育児を担当するというのが常識であったが、今は、幸か不幸か、その前提が変わっているということである。もちろん、性役割の固定化が解消されたのは女性にとっては一歩前進であったが、果たして母親が外に出て働くことが、幼い子どもにとっても手放しで幸福であったかどうかは、わたしは依然として疑問である。

ま、そこまで社会的なテーマの映画ではないと思われるのだけれど、この映画を見ていると、母とは、妻とは、そして、夫とはと、家庭や家族の問題を考えさせられる。人は、家庭生活を営みながら、人生を生きていくものであるということを改めて認識したと言っていい。ああ、それは作家だけでなく、多くの職業人の共通の悩みだろう。よくあるドラマでは、緊急医とか刑事など。職務の責任とプライバシーで悩むし、映画ではスパイや軍人、英雄などでもある意味同じなんだけれど。いや、むしろ作家は職業というよりも、芸術家の血というか、詩人の性がとうか、そうしたものがそもそも家庭的でないのかもしれないのだけれども。それと、もうひとつ恋愛と結婚は別という話が、これまた、一般の職業人と芸術家と、そして女と男とでは、また、違ってくるかもしれないとか……。



ところで、太宰治は無頼派と呼ばれていた。(→コトバンク:「無頼派」)

坂口安吾や織田作之助、檀一雄などとともに既成の文学観、価値観に反逆するという共通性でくくられている、大学受験の頃、文学史の勉強で暗記した。「無頼」という言葉の意味が今ひとつよくわからなかったような記憶がある。漠然と、独立独歩、何者にも与することなく、自らの価値観と考え方で、野武士のように生きるというイメージを持っていた。たとえばネットの辞書にはこんなふうに載っている。

ぶ‐らい 【無頼】[名・形動]
1 正業に就かず、無法な行いをすること。また、そのさまや、そのような人。「―な(の)輩(やから)」
2 頼みにするところのないこと。「単孤―の独人になりて」〈十訓抄・二〉
→ コトバンク(デジタル大辞泉)


高校生のわたしが漠然とイメージしていた「野武士」というのは、ま、それなりに正しいと言えそうだけれど、果たしてこの映画の主人公というか、ヴィヨンの生き方を見て、確かに既成の価値観から外れてはいるのだけれど、反逆してるって感じは全くないと思う。野武士どころか非常に弱々しく情けない。

冒頭に紹介したgoo映画の解説に、「先に弱音を吐いて開き直ってしまうのは自己防衛の本能であり、ある意味計算尽くだ。そんな究極のダメ男である夫の不始末を常に受け止め、現実的に対処してゆく」と書いている。確かにそうでもある、男は、太宰治を連想するそこそこの人気の小説家であり、同時に、生活破綻者であり、「ヒモ」でさえあるのだ。

ま、なぜだか、こういう「究極のダメ男」が素敵に思えて、一種の憧れさえ感じてしまうところが、文学的な反逆、価値観の反逆ということになるのかもしれないのだけれど、「無頼」が単に「頼りない」という意味もあるのじゃないかと思われたりもしてくる。

<追記>
あ、「ヴィヨンの妻」の主人公は大谷でなく妻の佐知なのだから、ある意味、女としては無頼と言える要素が強いかもしれないか。

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