David the smart ass心のダイエット!~時には辛口メッセージを~ |
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「直筆で読む『坊っちゃん』」
2007-10-26-Fri
夏目漱石の「坊っちゃん」の冒頭である。夏目漱石の死後50年が経過しているので、著作権が切れていて、青空文庫でも読むことができる。親譲(おやゆず)りの無鉄砲(むてっぽう)で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰(こし)を抜(ぬ)かした事がある。なぜそんな無闇(むやみ)をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談(じょうだん)に、いくら威張(いば)っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃(はや)したからである。小使(こづかい)に負ぶさって帰って来た時、おやじが大きな眼(め)をして二階ぐらいから飛び降りて腰を抜かす奴(やつ)があるかと云(い)ったから、この次は抜かさずに飛んで見せますと答えた。
→ 青空文庫:「坊っちゃん」
青空文庫で読めるってことは、DSで読めるということでもある。「DS文学全集」というソフトがあって、それを使うと青空文庫のデータをダウンロードして好きなだけ読むことができるのである(青空文庫は別にDSがなくったって、その気になればPCでもケータイでも読めるのるのですけ……)。
任天堂 (2007/10/18)
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→ 「DS文学全集」のページ
ネットでも、DSでも、もちろん文庫本でも読める漱石の「坊っちゃん」を、あえて、漱石の直筆で読もうという本が出た。
直筆で読む「坊っちやん」 (集英社新書 ビジュアル版 6V)
posted with amazlet on 07.10.26
夏目 漱石
集英社 (2007/10)
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こんな本が出たってニュースを聞いたとき、実はちょっと疑問が起きた。今時、『坊っちゃん』の直筆の原稿の復刻なんて読みたい人がいるんだろうか? そもそも、いくら漱石だって読みにくいんじゃないの? 手書きで。それにサイズが新書だし、大きさ的にどうなの? 読めるの? それに厚さ。1ページどのくらいになるか知らないけど、『坊っちゃん』一冊を新書サイズで原稿で復刻するなんて、けっこうなページ数になるし、それを写真で耐える紙質にしたら、ページも厚く、本自体も分厚いものになるのじゃないのか? そもそも、そんなすべての点で読みにくいものを、いったい誰が買うの? そんなので通して読むの? 通して読むのだったら絶対活字がいいって……。という感じである。
ところが実物を見て疑問はほとんど打ち消された。いざ見てみると、新書サイズながら結構読める。そりゃそうだろう、読めないものはそもそも製品にしない。そして、漱石の字も、意外に読みやすい。ただ、明治の作家であるので、歴史的仮名遣いだし、字体も旧字体というか正字体だし、そして、一部変体仮名も使用していたり、今から考えると当て字としか思えないようなものも混ざっていたりで、ま、そういう、いわば「国語資料」的に楽しんだりはできる(たとえば、「た」とか「か」とかは変体仮名が多用してある。「に」や「こ」もそうだ)。
漱石の時代というのは、国語の歴史としては今日の学校教育で習うような、所謂標準的な正書法がなかった時代で、もう少し言えば、まさに漱石たちがそれを模索していたというようなことも言えるわけなのだけれど、そういう目で見れば、楽しいひと時を味わうことができる。金額的にも新書で1200円は高いという感じもするが、中身を見るとけっして割高という感じはない。また、あわせて収録されている漱石の孫・夏目房之介氏のエッセイや、秋山豊(岩波漱石全集の編集者)の「手引き」もかなりおもしろい。
ワープロ全盛の時代にあえて手書きを問うてというとこだろうか。……でもやっぱり読むのは活字……。
※今年は生誕140年だそうで、江戸東京博物館(東京都墨田区)で特別展「文豪・夏目漱石~そのこころとまなざし~」ってのが開かれていて、漱石のデスマスクもあるそうです(11月18日まで)。
→ 公式ページ

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