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「ネットカフェ難民」で考える、差別語。

2007-08-29-Wed
ネットにいると、しばしば言葉について考えさせられます。また、同時に差別についても考えさせられます。そして、差別語や言葉狩りなんてことについても考えさせられます。わたしが今まで一番びっくりしたのは、「お年寄りという言い方は差別語だ」と上司に言われたときですが、「ええ? それは違うでしょう……」と口ごもると、「いや、使い方によってはそうなるんだ……もごもご」と言ったときには、もう、それ以上追求しないでおいてあげましたけど、基本的には「差別語だ」とレッテル貼りをして片付けるのは反対なのです(一時期「スパム」という言葉にも同じ匂いを感じていました)。

さて、先日厚生労働省が「ネットカフェ難民」について調査をしました。

ネットカフェ難民5400人 50代も2割超す
定まった住居がなく、インターネットカフェなどで寝泊まりしている「ネットカフェ難民」が全国で約5400人に上ると推計されることが28日、厚生労働省が実施した調査で分かった。20代が27%で最多だが50代も23%おり、高齢層にも広がっていることが判明。このうち半数が日雇い労働など非正規労働で日々の生計を立てているとみられるほか、失業者や無業者も全体の4割に達しているという。全国的なネットカフェ難民の実態調査は初めてで、厚労省は今後の具体的な支援策を検討することにしている。
  izaの記事の全文を読む……


5400人のネットカフェ難民というのが多いか少ないかはわかりませんが、わたしもいっぺんくらいオールタイムで過ごしてみたいって気持ちもないわけじゃありませんし、学生時代だったら結構快適ってやっていたかもしれません。でも、わたしの場合はちゃんと帰る家があって、たまにはやってみたいくらいのレベルでして、別に、そういうことまで、厚生労働省も問題にしているのではないようです。

記事の中の「週の半分以上をネットカフェなどで泊まり歩いている住居喪失者が約5400人いると推計した」という言葉にあるように、住居喪失者を問題にしているのですね。ネットカフェにいる住居喪失者だから「ネットカフェ難民」といっているのでしょう。

で、これに対して「(客の中には)定職に就くことが難しい方もいらっしゃるでしょう。しかし、複合カフェにとっては大事なお客さまなのです」と、業界団体がクレームをつけたんですね。
 → iza:「ネットカフェ難民は差別語 喫茶業界団体が声明」

う~む。これは微妙ですね。こういうときに安易に「差別」を持ち出してしまうと、声明を出した側が「難民」を蔑視している、つまり差別しているんじゃないか?って言われかねませんから。大丈夫ですか? 業界団体。

そもそも「難民」という言葉は差別語ではありません。差別の匂いはありません。一般的に「戦争、宗教や民族対立などの理由だけでなく天災や貧困、飢餓などの理由で住む場所を追われた人々を指す」(→Wikipedia)のが「難民」です。気の毒で悲惨な人たちです。援助の手が差しのべられる必要があって、ま、国際的には支援の運動はあり、法的な措置も考えられています。だからといって、「難民」という言葉には差別の匂いはありません。

また、比喩的に「元いた所にいられなくなり行き場を失った人を、難民に喩えることがある」(→Wikipedia)ということもあります。これは、わたしも使っています。わたし自身Naver難民として、ここ(FC2ブログ)に来ましたので。 こういう比喩として扱うことが難民に対して失礼だとか、現実を軽んじているということなら、一応その理屈はわからないでもないが、しかし、「災難で行き場を失った人」という意味ではぴったりなんですね。

さて、「ネットカフェ難民」という言葉はどうでしょうか? わたしが自身を「Naver難民」と呼んだのは、「Naverの閉鎖にともなって、居場所を失った人」という意味です。また現実にいる、「アフガン難民」とか「イラク難民」というのは、「本来にアフガンにいて、居場所を失った人」「イラクで、戦乱などで居場所を失った人」ということなんですね。

「ネットカフェ難民」という言葉を、「難民」という言葉の意味合いを込めて読むと「ネットカフェで暮らしていたが、追われて住居を喪失した者」という意味になってしまいます。そういう意味を込めたいときに「難民」ということばを選んでつかうべきだと思うんですね。

ところが逆ですよね。ネットカフェはお客として、彼らを受け入れているのです。ここで「難民」をつかう必然性はむしろなくて、「ネットカフェ居住者」でもいいというか、むしろぴったりのはずなんですよね。

あるいは最初に「ネットカフェ難民」ということばを選んだ人には、「居住地を失った人」とう類似点に加えて、経済的に困難な人とか、背景の悲惨さのイメージを持たせたかったのかもしれません。世の中が悪いからこんなことに……みたいな。ところが、そこが問題なんです。そういうときに、本来の意味を変質させて「難民」を使うと、気づかぬうちにそこに偏見や差別意識みたいなものが、すりよっているのです

これが恐ろしいんです。こんな形で「難民」という言葉を使い出したら、それこそ、ネットカフェの業界団体ではありませんが、「難民」という言葉が偏見や差別を込めた言葉になってしまいかねないんです

業界団体は「ネットカフェ難民」という言葉に、住居喪失者に対する差別の匂いを感じたのか、「ネットカフェ」に対する差別の匂いを感じたのかは、ちょっとわかりませんが、「ネットカフェ難民」という言葉には、本来の「難民」が持っていた意味を損なって使った結果、「難民」という言葉を差別的な言葉に変質させてしまっているということが言えるかもしれません。



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試みに「ネット難民」という言葉を検索してみます(ググりました)。

たとえば、

情報格差社会で、ネットを活用できずに社会の情報から取り残されてしまう人を「ネット難民」と呼んでみる。
  CNetJapan:「情報格差社会でネット難民にならないために」より

という使い方をしています。「~呼んでみる」というので、試行的な感じだが、これもちょっと「ネット」と「難民」との使い方がうろんです。しかしながら、「ネットの中にはいられない」「ネットがつかいこなせず、ネットから追い出された」というようなニュアンスで使っているとも感じられて、割合と本来の意味に近いと思います。

あるいは、

ただいまgallianoは自宅においてネット難民になっており、ブロードバンド環境から切り離されております。理由はいつも使っていたADSL回線が突然繋がらなくなった事。契約していた某巨大ポータルサイト系BB会社のサポートセンターに3度連絡するも、ひと月かかっても回線はぴくりとも回復せず。結局1ヶ月ぶんの料金無駄払い。抗議しても契約上返金はできませんの一点張り。おおそうかい。じゃぁここで○フーBBだって言っちゃうよ。
   「galliano、ネット難民になる。」より

こういう使い方は、わたしは正しいと思います。「トラブルで、ネットから追い出された」ことについての比喩です。

もちろん、ほかにもいくつもヒットしますが、「ネットカフェ難民」ってのがいささか長いので、「ネット難民」と省略している使い方が、けっこうあるようですね。

COMMENT



たしかに

2007-08-29-Wed-22:50
>「ネットカフェ難民」という言葉には、本来の「難民」が持っていた意味を損なって使った結果、「難民」という言葉を差別的な言葉に変質させてしまっているということが言えるかもしれません。

全くその通りだと思います。
私もこの報道を見るまではあまり意識していませんでしたが、「ネットカフェ難民」という言葉はなんか変ですね。

とはいえ、地震災害の時に使われる「ライフライン」も本来の意味は「生命線」であり、生活インフラの意味として誤用されている訳です。「ライフライン」という言葉は、実は阪神淡路大震災の頃から使われ始めたと記憶しています(ある報道関係者が使い始めたのですよ)。

ちなみに、本来、「ダイエット」という言葉に、「痩せる」という意味はありません。

結構こういうの多いと思います。言葉の変質。

「ネットカフェ難民」と言う言葉も、そういう風になってしまうのですかね。

☆miracleさん

2007-08-29-Wed-23:16
うん。

ものごとには適切な名称が必要です。そういう意味で、災害時などの「ライフライン」という新語というか、造語が、それまでに言葉なかったものを的確に言い表しているのであれば、別段それでかまわないと思います。新しい現象が起きたときに、適切な呼び名を与えるのは、ひょっとしたら、今のところマスコミの仕事かもしれませんし。

ただ、「難民」というのをこんなふうに使って、じゃ、公園でダンボールにすんでいる人も「公園難民」、橋や川原に住んでる人を、「川難民」と呼んでいいのかということであります。なんか、それって違うんじゃないのって思ったんです。

わたしは、「言葉の変質」はなんでもかんでも反対ってのじゃないんです。それは、最初に書いてあるとおり。

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