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David the smart ass

心のダイエット!~時には辛口メッセージを~

短編小説:「池のほとり」(2/5)

2001-03-10-Sat



  (2)

神田太郎の口癖は「俺って天才、俺ってカッコいい」でした。そして、「お前、馬鹿じゃねーの」でした。実際、多くの同級生たちは彼がそれなりに頭の回転が速く、理屈を言わせてもそこそこであることは認めていました。また、太郎は教師に対しては「先生、面白い顔だね」などとよくからかっていました。生徒を注意しているときなどは「そんなことより、先生も顔をなんかしたら?」とか、「そんなおもしろい顔で言われてもね~」などと言って、茶化してそれでけっこうウけてもいたのです。中学生ってそんなものなのでしょう。

もちろん、それは太郎自身の自慢の裏返しでした。要するに、自分のことはなかなかイケると思っていたのです。才色兼備。思春期に限らないことですが、成績がよくルックスがいいというのは誰もが羨むことです。太郎の場合、けっこう教師からも好かれていて、安心してそうした嫌味な発言が大目に見てもらえていたのかもしれません。また、ズケズケあからさまにものを言うのをおもしろがる現代的な風潮もあって、太郎自身はけこうクラスで人気もあると思っていたのかもしれません。

しかし、いくら正直であり、おもしろいことであろうと、言い方と場合によっては敵意を買うということは、やはりまたこの世の常であります。いっしょに遊びに出かけては、ちょっとしたいたずらをするとそれを親や教師にチクられてしまう。悩みを打ち明けると、そんな小さなことで悩んでいるのかと小ばかにしたように笑い飛ばされる。ふっと疲れて友達の愚痴をこぼすと、あいつは陰口を言っていたぞと当の本人に伝えられる。秘密の話のはずが尾ひれがついて笑いものにされている。そうして、太郎のことが逆に問題になるようなときには、ルールやきまりを笠に着て杓子定規に自分の正当性を主張しました。

そういうことが繰り返され、また、級友たちが成長してくるにつれて、太郎は単なるおもしろい頭のいい子ではなくなって、しだいしだいに、だれかれとなく疎まれ、のけ者にされるようになっていったのです。しかし、太郎は黙ってはいませんでした。「俺はいじめられている」「成績がよく先生に気に入られているから妬まれている」「仲間はずれにされている」というようなことを、自分だけでなく保護者を巻き込んで主張したのです。

それは一面当っていました。教師から見れば、太郎の友だちの気持ちを思いやらない、一方的で自己中心的な発想や発言は、必ずしも問題がないわけではありませんでした。しかし、太郎も保護者もそれを棚に上げていざ、イジメの被害者であることを主張しました。イジメを前面に出されると原因の一部は太郎にもあるということは、教師にとっても正直なかなか指摘しづらくなっていました。仲間はずれは確かにいけないことです。それだけをとりあげて指導しても真の解決にはならないと思いながらも、太郎が仲間はずれ状態にあることも事実で、保護者からの強烈なアピールの手前その点を注意しないわけにはいかなかったのです。






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