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David the smart ass

心のダイエット!~時には辛口メッセージを~

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◆Date:2005年08月10日
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金縛り体験

2005-08-10-Wed
受験生時代の話です。いろいろな事情があって、高一のある時期から、大学一年まで、わたしは離れの土蔵で暮らすことになりました。わたしの事情というよりは、家族の事情です。今想像すると、父は仕事上の悩みで少し不眠があったらしく、受験のためとはいえ、二階で遅くまでわたしがごそごそされていては、父の健康に響いたのでわたしを別に住まわせたのだろうと思います。

うちは農家でしたので、わりと大き目の土蔵があって、南側はきちんと使われていましたが、北側の一室は古い農具を放置しておくだけの部屋でしたので、父がそこを片づけ、化粧ベニヤを壁や天井に貼り、床には厚めのカーペットを敷いてくれて、わたしの勉強部屋兼寝室は完成したのです。

「土蔵」というとどんなところを想像なさるかわかりませんが、理屈を言えば、そもそも食べ物を保存する目的で作る建物です。床は高めに作ってあって、床下の風通しはすこぶるいいし、壁は土で分厚く固めてあるわけでして、外界の温度の変化にあまり影響されないようになっているのです。難があるとすれば、日当たりが悪いことと、通路においてある梅干だの、たくあんだの、茄子のつけものだの、そういうなんとなく気になる湿った香りがただよってくるくらいのことで、その点に慣れさえすれば居住性は悪くありません。

その部屋をわたしはとても気に入っていました。当時も今も敬愛する乱歩が「土蔵で蝋燭をともして原稿を書く」などと聞いていたので、わたしとしても大歓迎、嬉々とその真っ暗な土蔵で、当時流行っていた「アームライト」(って言ったと思う)を、コタツの机にくくりつけて、読書したり、イラスト描いたり、小説書いたり、詩を書いたりしていたのです。もちろん勉強もしていました。ま、ブログがあったらそれこそ乱文を書きまくっていたのでしょうけれど、インターネットどころか、パソ通もなかったころの話です。

受験勉強を1時過ぎまですると、わたしは母屋に入浴に行き、戻ってきてベッドに入ります。そして、当時大流行していた横溝正史シリーズを読んで寝るというのが、いわば習慣でした。角川の横溝正史の文庫は少年ものが刊行される前まで全部持っていて読んでました。100冊近くありましたよね。

そんなある夜、わたしは重苦しいような、息苦しいような感じで目が覚めました。

身体が動かない、息苦しい……。手足が完全に伸ばされきってしまって、首を上げることさえできません。金縛りです。声も出せません。目を開けても何も見えず、身体全体が重いのです。初めてなったときはびっくりしました。目だけが覚めて、身体がどこも動かないのです。

あたりは真っ暗です。もとより田舎なのですから、今の都会のようによる外灯やら看板を照らす明かりなどがあふれていることはありませんし、ましてそこは、土蔵の一室で窓には厚めのカーテンがひいてあるので外の明かりなど入ってくるはずもなく、真っ暗です。

そしてその闇の中、わたしの胸の上に何かいます。最初はなんだかわかりませんでしたが、わたしはそのぬくもり、丸み、重さを覚えていました。それは猫です。子猫ではなくて、親猫というか、大人の猫というか、それなりに大きな猫が胸の上に乗っているのです。

その猫の息遣いがわたしの鼻や口のあたりに感じられるのです。この生臭い息の匂い、それは、魚かなにかを食べた後の、猫の生臭い息の匂いでした。でも、見えないのです。猫の色も、大きさも、形も。ただ、その重さから、闇の中に一匹の猫が、わたしの胸の上に座っている。ちょうど置物になどなるような、例の行儀のいい座り方でちょこんと座っていて、大きな目でわたしの顔を見ながら、肴臭い息を吹きかけてくる……そういう体なのです。

猫の意図はわたしにはわかりません。ただ、その猫に胸に乗られているために息苦しくてどかそうとするのですが、わたしは声も出せず、払いのけることもできず、金縛りにあっているのです。

当時うちでは猫を飼ってはいません。小学校の頃は飼っていたのですが(妹が拾ってきたので止むなく飼ってました)、きれい好きな母が猫は座敷や布団を汚すというので嫌ったのです。

そういう金縛り体験をたびたびしました。たびたびというのは曖昧ですが、その土蔵の一室に住んだ3年あまりの間に、5~6回はしました。

「あとで聞けば、その土蔵では昔、かわいがっていた猫が……」なんて話があると、これが立派なオカルト話となるのですが、残念ながらというか、幸いなことにというか、そういう言われを聞いたことはありません。そもそも、おそらく、我が家でそこに寝たことがあるのはわたしだけですので、他の誰かがそういう体験をしたことなどということ自体あるはずがないのですけれど。

じゃ、夢でも見たのだろうということなのですが、それもまた不思議でして、その土蔵で暮らした期間しか、金縛りになったこともなければ、猫が胸に乗ってきたこともないのです。

今でもその部屋はあるのですけれど、毎日暮らしていないと、さすがに古い土蔵だけに、人が寝起きできる環境にはなく、たまに実家に帰っても泊まることはありません。

こうして話すといったいその猫はなんだったの?って思わなくもないですが、もう一度あの部屋に泊まって、その正体がなんだったかをつきとめるよりも、もうそこでは寝ないということにしておく方が何倍も現実的だし、それで不都合はないのです。



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