David the smart ass

心のダイエット!〜時には辛口メッセージを〜

「漠たる共感」(仮題)

2008-06-13-Fri
マスコミがアキバの無差別殺人者のことを報じている。
衝撃が大きかった。

ダガーナイフを規制してはという声が出ているそうだ。
安易に手に入るのは確かによくない。
無駄に殺傷力が高い。
2トントラックの方は規制するとは誰も言わない。
そりゃそうだろう。
日常的なものなのだ
歩行者天国は休止だそうだ。
日常的じゃないから意味がある
そうした開放感を売りにしたスペースだからなのだ。
特別な空間だった。

ダガーナイフが規制されるようになると、
ダガーナイフの神秘性はさらに増すことだろう。
ほら、これが、あのダガーナイフなんだと。
ヤツがダガーナイフを禁止にしたヤツなんだと。
ソレハ呪イデアリ、同時ニ、信仰トナラナイカ。
錆ビタ勲章ヲ与エルコトニナリハシナイカイ。

心理状態や生育環境、来歴などが「分析的に」語られる。
−−深い孤独感 ・破滅・彼女がいない・教育ママ・負け組・挫折・派遣社員・進学校・成績優秀者の転落・キレる……誰かに止めてほしかった。

識者が言う。
−−許せない・身勝手だ・甘えだ・自己中心的だ・異常だ・理解できない……。

理解できなくはないだろう。
共感を持つ若者はたくさんいると思う。
若者だけじゃなくて、大人たちにもわかるんじゃないだろうか。
ただし、行動にではなくて、心理に。

念のために書いておく。
犯行は決して許されるものではない。
どんな理由があっても免罪されることは必要ない。

許す、許さないではなくて、
怒る、怒らないではなくて、
悲しむ、悲しまないではなくて、
−−いや、たぶん悲しいことに、
この若者の心理を理解する人は、
案外とたくさんいるんじゃないかと思う。

もちろん、誰かの心理のすべてがわかるなんて人はあり得ない。
そんなの誰にだってわかり得ない。
身近にいる人の気持ちがわからないことだってあるのに、
切り取って報じられた断片だけでは、
もちろんわかりようがない。

ただ、自分がこうしていられるのは、
あるかないかの才能があって、
そう呼ぶに値するかどうかの努力をして、
ありがたい家族や周りの支えがあって、
同時に、適当に羽根を伸ばすことができていて、
そして、いくらか運があった。

あのとき大学受験に失敗していたら、
あのとき就職試験に失敗していたら、
あの面接で不合格だったら、
あのとき会社が倒産していたら、
彼女がイエスと言ってくれなかったら、
あのとき母があの言葉を選ばなかったら……。

そんな寒々とした気持ちのなることはないのだろうか。

止むに止まれずに数人に聞いてみる。
−−もしそんなふうに感じるとしたら、お前は不幸だ。
−−そう言われればそうかもしれないが。そんなふうには思わない。
−−全然違うよ。あれは異常だ。
−−ふ〜ん。でも、全然違うじゃん。

ありがとう。最後の言葉はありがたかった。
あなたはほんとうに優しい人だ。

demo ta reka oremo sodato ittekure.






−−−−−− 慎んで犠牲者の冥福をお祈りするとともに、
           被害者及びご家族にお見舞い申し上げます。


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「血の凶行」(仮題)

2008-06-11-Wed
選択するのは捨てること
何かに向けて何かを継続するのは
他の何かを捨ててそれだけに打ち込むこと

五輪の選手だってそう
五輪に出られなかった選手だってそう
その前の予選に出られなかった選手だってそう
その補欠だった選手だってそう

何かに向けて何かを続けるのは
他の何かを捨ててそれだけに打ち込むこと

勝って喜ぶのはいい
だってそれは何より本人の栄光だから

大切なのは
負けたとき
夢が破れたとき−−

そんなときに
 ガッカリさせられた
 失望した
 お前は役立たずだ
 もう信用しないから

そんな言葉で捨てられたらたまったものではあるまい。

選択することは捨てること−−
選択の余地なくそれを選択させておいて
気持ちにかかわらずそれを捨てさせておいて
結果が出なかったからといって
捨てられたらたまったものではないだろう

大切なのは
勝って喜ぶことではなくて
負けたときに誉めてやることなのですよ
そういう気持ちのわからない人が
親になってはいけません。




−−−−−− 慎んで犠牲者の冥福をお祈りするとともに、
           被害者及びご家族にお見舞い申し上げます。


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「祖母に遇う」

2007-08-24-Fri
−−突然の訃報だった。
父方の叔母は三人で、末の叔母が亡くなった。入院はしていたのだが、先日快方に向かったと聞き、個室から大部屋に移ったからという連絡を受けていた。

−−ああ、お祖母さんに似てるな
通夜の晩の夜食の席で、少し離れた席に座った上の叔母が、死んだ祖母に似てきたことに気づいた。突然の発見だった。思わず見とれた。

頭髪のほとんどが白髪になり、しわくちゃになった叔母は、若いころはよく肥えていて、ちっとも似ているとは思ったことがない。久しぶりに見た叔母は、祖母にそっくりだった。

それまでは、中の叔母が一番祖母に似ていると思っていた。でもそれは、祖母の若いころはこんな感じだったんだろうなという、そういう感じだった。

−−しかし、今度は違う。
上の叔母はわたしの記憶の中の祖母に似てきた。もう、死んだ祖母が生き返ってきたような感じだった。わたしは久しぶりに、心の奥のぬくもりのような幸福な感情を感じとっていた。そして、中の叔母も幾分年をとってきて、昔の昔の祖母に似てきた。

−−通夜の翌日
告別式を終えて斎場での弁当の席で、二人の叔母の向かいに座った。斎場に似つかわしくないにこにこの笑顔で、
  おばあちゃんに似てきましたね
何も前置きもなく、最初に出た言葉がそれだった。
  だもんで、じっと見ておったのかん。
  なんだかてーさいが悪かったに。
連日じーっと見つめられたら、なるほど嫌なものだろう。
  痩せて、ほんとうによく似てきましたね
また、繰り返した。
  自分で鏡を見ててそう思うよ。
  おばあさんが生き返ったみたいで嬉しいかん?
ほんとうにそんな気分だった。それは懐かしいというよりも、明確に幸福感だった。

突然、一家の主婦を亡くした末の叔母一家の悲しみと痛手には申し訳ないが、少なくともわたし一人は、なんとなくそうしたほんのりとしたぬくもりを味わわせていただいた……。

−−斎場からのマイクロバスの帰りに、中の叔母の隣に座った。
補助席だったので、背もたれがなく、少し叔母の席の背もたれにもたれかかるようにして座って、上の叔母の後姿をずっと見た。祖母の隣に座って、祖母をじっと見つめていられるのは、ほんとうに幸福だった。

亡くなった下の叔母も、きっと天国でこうして祖母に遇っているんだろう−−。

  なんだ、もう来ただかやれ?
  ごめんね。来ちゃったじゃん……。
  ほうだか。しょうがないなぁ……。まぁ、いい。のんびりやれ。



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無題または「ハザード」

2007-05-13-Sun
一人でクルマを走らせるのが恐い。
周りが見えない。
普通の信号待ちがイライラする。

アクセルを踏み込んで追突してしてやりたくなる。
やっとの思いで正しく止まる。
そのくせ、
青になってもなかなか動き出せない。
前のクルマと車間が開いてから、思いついたように動き出す。

ラジオののど自慢がうっとうしい。
鐘がいくつ鳴ろうと関係ない。
アナウンサーの優しい呼びかけが耳に入らない。
むしろ思いつくのはニュース。
銀行に立てこもった税務署員の気持ちがわかる。
ゴルフ場で殺された人よりも、殺した男の気持ちが気になる。
もう、どうだっていい、なんとでもしてくれと。

たとえば虫歯の激しい痛みにこらえられず、
己の指先に針を刺して紛らそうとするようなことが、
あるいはあるとしたら、
犯人たちは、何かがほしいというよりも、
ただひたすらそこから逃げ出したくて犯行に及んでしまったのではなかろうかと、
妙な共感をする。

一人でクルマに乗るのが恐い。
カーブでスピードを落とす気にならない。
いつもより減速のタイミングが遅いことが自覚される。

周りのクルマの車種が気にならない。
運転席にどんな美人が乗っているかとか、
気にしてのぞくこともない。
ただ、邪魔だ、邪魔だ、どけ、どいてくれと念じている。
思い通りに進まず、ルールや状況に応じて運転するのが嫌でならない。

カタストロフという言葉が思いつく。
あるいは、覆水盆に返らずとか。

電話しても誰も出ない。
 誰か……。

ただ、一人でクルマに乗るのが無性に恐い。


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