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David the smart ass

心のダイエット!~時には辛口メッセージを~

「もんば飯」~書籍紹介『放送禁止歌』

2005-12-29-Thu
『悪役レスラーは笑う』をおもしろく読んだが、先日書店をぷらりと歩いていたら、同じ森達也の『放送禁止歌』が平積みになっていたんで、へぇ売れてるのかと思って、買ってきた。

放送禁止歌
放送禁止歌
posted with amazlet on 05.12.29
森 達也
知恵の森 (2003/06/06)
売り上げランキング: 3,262
おすすめ度の平均: 4.62
5 幾重もの<驚き>が織り込まれて
5 まだ大丈夫
5 規制するのは誰?


放送禁止歌とは何か? なぜ、放送禁止なのか? 誰が決めるのか?--本書は、放送禁止歌をめぐるドキュメントを放送しようという、つまり、放送禁止歌を放送しようというドキュメンタリーの企画を通して、監督である筆者が追究し、出くわし、気づいた数々をまとめたドキュメンタリーです。

この手法は「悪役レスラーは笑う」でも使われています。つまり、番組の企画をする、問題意識をどうもつか、視点をどこにおくか、テーマをどう据えるかなど。そして、そのために、いろいろと調べていく。関係者の取材する。結果として、番組ができる(場合によっては「悪役レスラー」の時のようにできない)。しかし、すべてが番組にできるわけではないし、テレビ番組として発表しなかった部分にもおもしろい点はたくさんあるのですね。わたしはその放送を見てないから、比べてどうってことは残念ながら言えませんけれど。

さて、あまりネタバラシになっても、この本を読むおもしろみを奪ってしまいますので、あまり細かくは書きませんけれど、放送禁止歌ってのはある種の日本のマスコミ(主としてテレビ)の思考停止の一つの現れということになってくるんだと思いますね。放送禁止歌の扱いをめぐって、そういうところにまで迫っていきます。

また、日米比較というわけで、デーブ・スペクターとの対談もあるのですが、それまたけっこうおもしろいです。「小人を規制して、巨人を規制しないなんて片手落ち」なんていうブラックな指摘もありまして、ま、おもしろいです。アメリカにまつわる誤解と、日本人の横並び意識みたいなものを、ここでも確かめることができます。ま、日米の比較と言うことになるとどうしてもそういうことになりがちです。

また、テレビ番組化の過程で、幾人かの放送禁止歌の作者(歌手)たちに、実際に歌ってくれないか? と頼むのも、また、おもしろいと思いました。テレビ局の関係者にも放送禁止歌をどのようにとらえているかインタビューします。また、制定しているとされる民放連や、きつい糾弾や抗議をくりかえしてきたと言われている部落解放同盟にも筆者はインタビューに行きます。それが再現されているのですが、なかなかいいかげんというか、共同幻想というか、思考停止と問題意識の欠如が浮き彫りにされる感じに、驚かされます。

今回の記事タイトルの「もんば飯」はおからご飯のことだそうです。実態がどんなものであるのが、わたしにはわかりません。これまた、どういう過程で、どういう基準で「放送禁止歌」になってしまったのか、よくわからない「竹田の子守歌」の、いわば幻の一節、

久世の大根めし 吉祥の菜めし
またも竹田のもんば飯

からです。まんぞくな飯が食えなくて、大根めしや菜めししか食べられない地域がある、しかしそれはまだ、もんば飯を食うところよりかまし……差別される側が差別する側にまわるという連鎖、その悲しさをものがたる一節と言えるでしょう。それは、差別だけでなく、現在の子どもたちのイジメなどにも起きてくる現象であり、一つの人間の性なのかもしれません。

紙ふうせんの「竹田の子守歌」に当初盛り込まれなかった、そして後に発掘されたのこの一節は、それを歌い筆者はそれを指摘するのです。「竹田の子守歌」紙ふうせんの「Saintjeum」というアルムに収録されています。

また、「封印された竹田の子守歌」のページでは実際に聞くことができますし、放送禁止になってしまった事情も説明されています。

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「血はリングに咲く花」~書籍紹介

2005-12-21-Wed
忘年会があり、いつもはクルマで通勤ですが、久しぶりに電車に乗りました。別に久しぶりでもないか。ずっと、ハードカバーの『照柿』を読んでいるのですが、この日は酔っぱらう予定でしたので、携帯に便利な新書か文庫でもないかと書店に立ち寄ると目にとまったのが、これ『悪役レスラーは笑う』です。

副題は『「卑劣なジャップ」グレート東郷』となっていますが、力道山時代の大ヒール、グレート東郷の正体に迫る一冊です。筆者の森達也(ドキュメンタリー作家・映画監督)は1956年生まれのプロレスファン。力道山時代のおぼろげな記憶と、馬場猪木の輝かしい時代をリアルタイムで見てきた世代です。『週刊ファイト』が編集者を募集していると知って面接試験をうけるために東京から大阪に赴くも見事に不採用。以後、プロレスを仕事にすることができず、ずっとプロレスファンを続けてきたんだそうです。

往年のファンなら名前ぐらいは知ってるのでしょうが、最近の若い人に言うとすると、こんな説明はいかがでしょうか。先日和泉元彌とハッスルで対戦した鈴木健想はWWEで「ケンゾー」と名乗ってヒロコとともに憎まれ役(ヒール)として人気を博していたのですが、そのケンゾーも着ていたような、ステテコサイズといいますか、ようするに膝下までのリングタイツとベアフット(裸足)という田吾作スタイルを考案、イメージ付けしたのが、このグレート東郷なんですよ。G馬場もデビュー時代はアメリカでこの出で立ちで戦ったのです。

今の時点で、まだ、前半しか読んでないのですけど、「老人ショック死事件(このとき白黒テレビの中でブラッシーに噛みつかれ、流血していたのがG東郷です)」、「G馬場のアメリカ修業時代(馬場や猪木をアメリカでめんどう見てたのがG東郷です)」、「G東郷リンチ事件(力道山亡きあと日本プロレスを乗っ取ろうとして、ユセフ・トルコと松岡厳鉄にホテルでKOされたのがG東郷です)」などなど、試合そのものよりもプロレスの周辺がいくつも描かれています。

これはそういうG東郷のドキュメントであると同時に、G東郷を核にした日本のプロレス史であり、日本のプロレス論でもあります。後半にはルーテーズ戦を振り返るグレート草津(同名のK-1選手の父)へのインタビューもあって、先が楽しみです。

ちなみに、題名に採用した「血はリングに咲く花」は「世紀の悪玉」と並んでG東郷の枕ことばになっていたキャッチフレーズです。総合格闘技やK-1にはない、5カウント以内の反則が許される世界。その中で自ら悪役を演じ、あえて汚いプレーをし、流血させ流血させられ、ブーイングを浴び、そしてベビーフェースを輝かせる、そういうことを仕事にしたいたのが悪役レスラーなのです。

力と技の勝負であるスポーツ的なプロレスではない、ショーマンプロレス。その歴史が書かれている一冊です。むふふ、虚虚実実、smart ass です。

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