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David the smart ass

心のダイエット!~時には辛口メッセージを~

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名鉄電車にて

2007-08-11-Sat
電車の座席の配置には大きく二種類ありますよね。所謂「お見合いシート」といって真ん中のスペースが大きくとってあって、両窓側に沿って長い椅子が配置してある。つり革も充実しています。主に通勤通学などで混雑するときや、都市部で使われるようです。もう一つは、なんというのでしょう、二人がけの椅子が並ぶ形です。これも、背もたれが移動したりして進行方向を向けるタイプのものと、固定式で4人が一セットというタイプにものもあるといえばあります。

さて、その妙な事件は先日乗った「お見合いシート」タイプの電車で起きました。

わたしの乗った電車は豊橋発中部国際空港行きで、名駅(名古屋駅)まで行かずに、金山(かなやま)から中部国際空港に向かってしまいます。名駅に行きたい人は、金山の一つ手前の神宮前(じんぐうまえ。ちなみにこの神宮とは熱田神宮のこと)で降りることになります。金山で乗り換えることも実際は可能ですが、乗り換えホームの関係上神宮前の方が都合がいいわけです。

さて、神宮前で相当程度の人が降り、車内は6~7人がかけるだろうお見合いのシートの片側に3~4名が座るという、ガラガラというよりは、スキスキくらいの状態になりました。それまではシートは全部埋まって、立ってる人もそれなりにいるという感じでしたので、少し開放的な気分になりました。

わたしはふっと目を上げて前の座席(お見合いシートです)のところを見ると、立派な札入れが落ちています。さっきまで、そこには、Tシャツ姿の小柄な若者が座っていた席です。彼は手にコンビニのレジ袋を提げており、ペットボトルとおにぎりが入っていたのが印象的でした。

--あ、忘れていったんだ! どうしよう。もう出ちゃうな。
わたしは慌ててその札入れをとると、ホームで乗降の確認をしている駅員を大声で呼びました。
「すみません。今、降りた人が忘れていきました! これ、忘れ物です」
駅員にしたら、おそらくそうした形で忘れ物を届けられるのは初めてのことだと思います。また、発車の合図のこともあるので、危険な状態ならいざしらず、どうでもいい客のクレームなど迷惑だと思ったのかも知れません。しかし、わたしは神宮前で降りる気にはならなかったので、開いたドアのところに立ったまま、立派な札入れを振り上げながら、「今降りた人の忘れ物」ということを大声で言っていたのです。駅員もわたしも、もう発車の合図があってちょっと焦っていたのだとは思います。ま、それでも、駅員も状況が飲み込めたようで、うなずきながらそれを受け取り、ひとまず本来の業務であるだろう乗降客の確認の合図をしました。そうして、電車のドアがきちんと締まるのを確認すると、わたしから受け取った財布を手に急いでホームを駆けて行きました。

わたしは、駅員の後ろ姿を見送りながら、ちょっとした満足感を感じながら、再び椅子に座るとさりげなく周りの様子を見てみました。他の乗客たちも別になんにもないという感じでそのまんまでしたが、その時、なんとわたしの視界にとんでもないものが飛び込んできました!

なんと、降りたと思ったその若者が、どこからともなくやってきてかと思うと、おもむろに元いた座席に座ったのです!

……! わたしは、今まで生きてきて、初めて「狐につままれた」という言葉を実感しました。

:「あれ? あなたいるじゃん!!」
:「はい」(若者は小さな声で頷きました)
:「え? 乗ってた?」
:「……はい」(若者は落ち着いたものでした)
:「今、ここに、あなたの財布があって……」
:「……はい」
:「てっきり降りたと思って、さっきの駅のホームの駅員に忘れ物だって渡しちゃったよ!」
:「……あ、そうですか」

どういうわけか、若者は驚くふうでもありませんし、怒るようでもありません。非常に冷静に、「はい」「そうですか」「いいですよ」と繰り返しています。こっちはひどく申し訳ないことをしたと思って、詫びるのですがどうも相手に響かず、相手は平然となにかやたらに落ち着いています。

:「だって、降りたと思って。あれ? いたの? なんで? あれ……」
:「……はい。戻ってみます。いいですよ」
:「え? いい。ごめんね。いや、いたの……」
:「……はい。戻ります。いいです」

スキスキの車内の客たちは、さっきよりも興味深そうにわたしたちのやりとりを見ていました。状況がわかった人は何人もいたのでしょうか? わたしはなんだかひどく混乱して、そもそも、どうして札入れを無くした本人があんなに落ち着いているのに、こっちがこんなに慌てているのだかそこがわからなくて、驚いてばかりでした。

金山についたのでわたしは、軽く手を挙げて若者に挨拶し、若者はちょっと頷いて、そのまんまその電車で神宮前に戻って行きました(地元の人以外はわかりにくいのでしょうが、中部国際空港行きは金山で折り返し、神宮前までは同じ線路を戻りそこから分岐するのです)。

どうして若者があんなに落ち着いていたのか謎だったのですが、あとになって振り返ってあれこれ考えてみて、ありそうで、納得の行く説明に思い当たりました。おそらく若者は全部わかっていたのです。もちろん、財布を承知でそこに置いていったのではありませんよ。

想像するに、若者は神宮前で電車がスキスキになったときに、降りたのではなくて座席を移動したのです。車両の前後に一部お見合いスタイルになっていない、二人がけの椅子が採用してある部分があって、おそらく、おにぎりを食べたくて、スキスキになったときにそちらの座席に移動していたのですね。財布は忘れていったのですし、本人にしたらずっとそこに座るつもりだったのですね。

ところが、わたしが財布の忘れ物があったと大声で駅員に言っているのをおそらく聞いたのだと思います。しかしわたしも「今降りていった人が忘れた」というような言い方をしたので、すぐに自分のことだと気づかなかったのではないかと、ま、想像します。ところが、どうも、おにぎりを食べて落ち着いてポケットのあたりを探ってみると、自分の財布がないことに気づいたのではないかと思うのです。ああ、さっき誰かに拾われて、駅員に渡されたのは自分の財布だったんだと……。

そうしてみると、わたしが、慌てて恐縮して、困っている姿を見て、驚くのでも、怒るのでもなく、落ちついて頷いたわけがわかりました。自分の財布が拾われて、パクられずに無事駅員の届けられるところを、それとしらず遠くで聞いていたとうわけです。

……もしそうだとしたら、そうと言ってくれたら、わたしももう少し落ち着いたのに……と、ま、後で思いましたけれども。ま、ちょっとドラマチックな展開ではありました~。



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